Safety scrum
セーフティ・スクラム制度
〜研修医のメンタルヘルスを守るためのセーフティネット〜

What is “safety scrum”?
〜セーフティスクラムの概念〜

セーフティスクラムとは

2006年に「研修医の4人に1人が抑うつ状態を呈している」という衝撃的な報告が文科省から発表されたのは記憶に新しいですが、研修医が非常に特殊なストレス環境に置かれていることは事実です。しかし、全国的に現場の理解が十分だとは全く言えない状況です。
そもそも「医師の53%は自分の心身の不調を他人に相談しない(日本医師会 2009)」と言われ、研修医は相当なストレスを抱えていても、誰にも気づかれていないことが圧倒的に多いのです。
研修医は上記のような独特の高ストレス環境におかれながら、孤立しやすく、誰にも助けを求められない状態で問題を一人で抱え込んでしまいやすいのです。心を病み、休職したり自ら命を絶ってしまう研修医の報告は後を絶ちません。

僕たち「セーフティスクラム」は、研修医のメンタルヘルスの向上を目的としたレジデント・研修医を主体とするネットワークです。皆さんが研修生活においてメンタルストレス不全に陥ることなく、充実した研修をしてもらうために若手独自の視点でさまざまなシステムを用意しています。
大きく4つの活動について説明します。

 

セルフケアスキル特講

研修生活にどんなストレスが待ち受けているのか、それにどのように対策していくのか。性格や根性論ではない「スキル」としてのストレスマネジメントを臨床に入る前のオリエンテーションで身につけてもらえるための 超・実践的な講義です。 具体的な休養のとり方や、社会的に問題のある「クラッシャー上司」への対処法など、総論的な講義とは一線を画す「実用性」に特化した内容でセルフケアに対する知識を深め、自身のメンタル防御力をアップしてもらいます。

ストレッサー情報シェアリング(SjS)

どこの病院にも一定確率で存在する「クラッシャー上司」。県内の研修病院内で、ストレス要因の情報を共有します。自由度の高さが高知の研修のウリですが、行ったことのない病院に対しては当然誰もが不安なもの。 起こりうる困難に対して、事前に必要な知識を得ることで、ストレスへの回避力をアップしてもらいます。メンバーに気軽に相談ください。

セーフティスクラム・ピアサポート

メンタルヘルスマネジメントにおいて重要なのは、重症化する前に誰かに相談すること。しかし、研修医の本音として、「普段話したこともない人にいきなり相談っていってもピンとこない」「いきなり精神科に行くのは心理的なハードルが高すぎる」という意見が多く、ストレスが積み重なっても結果として誰にも相談 できない状態に陥ってしまいがちなのです。 そこで、普段から研修医に最も近く共感的な存在である先輩若手医 師によるピアサポートを行っています。 単に相談するだけでなく、産業衛生スタッフや研修担当と連携をとり、研修環境の改善へのアプローチも可能な限り行っていきます。
また、メールによる相談も受け付けています(safetyscrum@gmail.com)

ラインケアスキルサポート

「ラインケア」とは職場のメンバーのメンタルヘルスを守るために管理者が行う取り組みのこと。セーフティスクラムのメンバーが心身医療関連の勉強会・学会への出向したり、専門の資格を取得してゆくことで、周りの人間が行うべきケアの能力を高めていきます。出張費や勉強会への参加費をセーフティスクラムが負担し、メンバーのラインケアスキルの向上をサポートします。
いまセーフティスクラム内では「日本心療内科学会登録医」の取得を目指し学会出張などを行なっているメンバーが数名います。専門家ではなくてもメンタル不全をしっかりスクリーニングできる医師の養成が求められており、そうした時代のニーズに応える形で専門領域以外のサブスペシャリティを持つ医師は今後も増加すると思われます。
こうした取り組みの中で、すべての医療者にメンタルへの知識を深めてもらい、たとえ非専門であってもメンタルにも明るい「真のジェネラリスト」を数多く育成していくことで、高知県全体がメンタルに対する深い理解と手厚いサポート体制をもった「日本一のメンタル立国」となることを目標にしています。



2012年度セーフティスクラムメンバー紹介


鈴木裕介(代表 細木病院/高知医療再生機)

菅健太郎(高知大学)

小島康司(高知赤十字)

森坂広行(高知大学)

山根春那(高知医療センター)

荒川悠(近森病院)

鈴木美香(近森病院)

武政沙織(近森病院)

 杉村夏樹(高知大学 整形外科)

石川洋一(高知大学)

長尾明日香(高知大学)

松岡賢樹(高知医療センター)

 


アドバイザー(セカンドネット)

須賀 楓介(高知大学精神科) 

土居江里奈(芸陽病院精神科)

メールでの相談窓口は safetyscrum@gmail.com


研修医のストレスについて
 
■ 人間としてのストレス
 眠れない、労働時間が長い。

■プロフェッション・ギャップとしてのストレス
 指導医やコメディカルから、「もう医者なんだから〜できるだろ?」「研修医のくせに〜か?」の狭間に置かれる。

■新社会人としてのストレス


■どこにも所属していない孤独感:どの病棟でも基本的には「よそ者」であること。
メンタルシックの増悪の原因は、「仕事の量、難易度(2位・16%)」よりも「コミュニケーションの希薄化(1位・50%)」(日本生産性本部メンタルヘルス研究所)

■指導体制と研修医の研修したい内容とのギャップ
→将来当該科を希望しない者にとっての「心臓カテーテル」や「手術の鉤持ち」などは基本的に苦痛でしかないというのがほとんどの研修医の共通認識。

■目まぐるしい環境変化
慣れたときには新しい職場に移り、また新しい病棟ルールやスケジュールに適応しなければならない。変化とはすべからくストレスである。

■現場の不理解
 「自分達の若いころは」「研修医に媚びすぎではないか」
 「医者は身を削って働くものだ」「精神的にまいるやつは、医者に向いてない」
 「『帰らない人が偉い』という文化」「何があっても上級医の意向には逆らうべきではない」
 ※しかし、実情としては、まじめで、几帳面で、成績もよくて、陰日向なく働く研修医にメンタル不全が多い。

■将来像の不安
医局の人員減少や初期研修制度に伴う変化により、ロールモデルが不在で自分の5年先・10年先が予測しにくい。
専門医や学位のメリットが見えにくく、理想とするキャリアを立てにくい。

■問題のある指導医の存在(
クラッシャー上司
 カンファ中に学生の前で叱責する。個人的な書類や研究業務の雑用を押しつける etc…
※メンタル不全の温床となっている。実情としては現場、医局としては見て見ぬふりをされている。